言いようのないアンバランスさ クロス タウンゼント 14k
クロスというと自分の中ではウォーターマンと並んで人からいただく高級舶来ボールペンのブランド、というイメージがある。リフィルの書き味は今となってはいまひとつで互換性に乏しいのが難点だけど、安定感は抜群。スーツのおっさんによく似合うペン、そんなイメージ。
一方で万年筆はというと、なんとなく影が薄いような…。まあなんというか、シェーファーもそうだけど、今のUSメーカーだよなあ。
そんなクロスの万年筆を試してみたくなって、ちょっと昔のタウンゼントを入手してみた。タウンゼントは創業者の名前を冠する代表モデル。名品センチュリーと較べて太さもある、大柄でずっしりした金属ボディでかなり存在感がある。
現行のペン先は18kかスチールだが、このモデルは14k。ペン先は塗り分けのない、金一色。なんでもこの頃のペン先はペリカンのOEMだったとか。
タウンゼントのデザインで特徴となるのは何といってもキャップまわり。クリップの形状は他にはないエレガントさがある。クリップにはロゴ。僕のやつは古いロゴだね。
クロスのアイデンティティーとなるコニカルトップ。このデザイン、野暮ったいようで見慣れるとなかなかいいんだな。キャップは嵌合式で、ぐっと押し込んで最後にパチンと閉まる感じ。パーカーソネットなんかに比べるとかなり抵抗感がある閉まり具合だ。
実際に書いてみると書き味はなかなかいい。入れてみたインクがエルバンのムーンシャドウというかなりシャバシャバしたインクだったからかもしれないし、前オーナーが調整したからなのかはわからない。紙への当たりも金ペンらしい軟らかさがあって、Fにしては線が太めなのだが、これが何とも表情のある文字が書ける。
ただ一方で、凝った金属キャップの宿命というか、キャップが重くて後ろに挿して筆記すると、とにかくリアヘビーになる。胴軸も長さがあるので重心がかなり後ろになってしまうんだな。ペンの中央付近を持って寝かせる書き方でないとペン先がコントロールしづらい。もう少し胴軸が短ければだいぶ違うのだろうけど…。かといってキャップを外すと今度は何か重心が定まらないというか、しっくり来ない。
金属軸ってのは重くなればなるほどよっぽどボディのバランスが自分に合っていないと、ペン先が好みの書き味でも使いづらく感じるんだなあ、と改めて思ってしまった。
とはいえせっかく僕の手元に来たペンなのだから、しばらくはその違和感含めて楽しんでみたいところ。
タウンゼントは前述のとおり現行モデルは18kとスチールペン先のモデルが用意されている。中古でもラピスラズリとかでなければそこそこ手頃な価格で金ペンも転がっているので、試してみるのも悪くないかと。