紙の上にぐるぐると。

文房具なんかを中心に、興味のあることをつらつらと。

多機能ペンの機構についてまとめてみる。

さて、前エントリで触れてみたので、多色ボールペンやマルチペン・多機能ペンについて、ちょっとまとめてみようと思う。

tome-zoh.hatenablog.com

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多機能ペンは1本持っているととにかく便利なのだが、機能数と繰り出し方式、使えるリフィルなど結構ややこしい。ここでは繰り出し方式からいくつか分類と特徴なんかをまとめてみる。

 

1.ノック式

プラ製の安価なものから金属軸の準高級品まで、およそ3,000程度までの国産多色・多機能ペンで採用されている繰り出し方式。主に側面上部の色・機能ごとのスライドレバーを押し下げることで芯を繰り出すタイプ。スライドレバーはリリーススイッチも兼ねている。

この方式の利点はとにかく確実で素早い芯の切り替えが可能なことにあると思う。また、リフィルが独自規格でロングタイプが多く、コストパフォーマンスに優れているのも利点。

一方で利点は往々としてそのまま欠点になるもので、まずデザイン上、側面にレバーが複数配置されるのでちょっと上部がうるさい、いかにもマルチペンというデザインになる。そしてそのレバーの機構が単純なだけに特に安価なものでは剛性感がなく、不安定な感じになる。また、色・機能分だけレバーを配置する関係上、どうしても色・機能数が増えると軸が太くなる。そしてリフィルは独自規格になるため汎用性には欠けるので、好みの書き味や色味のリフィルであるかも選ぶ際の重要な要素となる。

 

2.振り子ノック式

主に舶来ブランドだったり国産でも高級ラインの多機能ペンで採用されている方式。軸を水平にして出したい機能・色の表示を上向きにしてノックすると、その芯が繰り出されるもの。内部では表示の対角線上にその芯がセットされていて、表示が上向きになると、目的の芯は下になる。内部の振り子というか錘は重力で下に落ちるので、目的の芯をノックで繰り出すことができる。

この機能の利点は、軸が細くできることと軸上に繰り出し機構を設定する必要がないので軸全体の剛性が高いこと。そしてノックスイッチとリリーススイッチがそれぞれ一つで済み、かつノックスイッチとシャープペンの芯繰り出しスイッチを兼ねることができることだと思う。ラミー2000のように万年筆からボールペン、シャープペンまでシリーズ化しているラインではデザインを統一化するのに寄与している。

一方欠点も多いのがこの方式。まず誤って繰り出すことが多い。目的の色のマークを上部に向けても、内部の振り子が確実にセットされないと別の色が繰り出されてしまう。これはまあ細い軸の内部でのことだから仕方ない部分ではある。そして内部で振り子が動くので芯を繰り出していない時に動かすと音がする。この辺はちょっと高級感をスポイルさせてしまう部分でもある。そして軸上に必ず色やシャープペン機能のマーク表示が必要となる。この辺高級ラインは概ねうまくデザインに取り込んではいるけれど、やっぱりこれも高級感をスポイルさせる要素かな。また、内部の機構が動くため遊びがどうしても生じるのか、芯が短いわりには筆記時のカタツキが生じやすい機構でもある。

ちなみにこの機構のリフィルはほぼ4C芯を採用している。そのため芯の選択肢が多く、自分の好みの書き味にすることが可能。

 

3.ツイスト式

軸を回転させて繰り出す形だが、ここでは2色ボールペンに見られる、左右のツイストで繰り出す色・機能を選択する形のものを挙げる。

こちらの利点は繰り出す色や機能が限られているので右にひねればボールペン、左にひねればシャープペン、といったように動作と機能が連動されること。そしてツイスト幅が限られるのでツイスト時の剛性感が高いことだと思う。

一方で欠点は、これは当然ながら2つの機能しか割り当てができないこと、それに尽きる。

 

4.ロータリー式

こちらも軸を回転させることで芯を繰り出す方式だが、こちらは同じ方向に回し続けることで次々と芯を繰り出していく(例:シャープペン→黒ボール→赤ボール→シャープペン…)方式。主に金属軸の国産中級機種に搭載されている機構。

利点は振り子ノック方式と同じで軸が細くできること。また、ノックスイッチは芯の繰り出しには使用せずシャープ芯にのみ使用するのでノックストロークが小さく設定可能。また、軸上に色表示をする必要がないので、自分の好きな色のリフィルを搭載できる(振り子ノック式でも色表示と連動しないことを気にしなければ可能だが…。)ことが挙げられる。

一方欠点。これは軸の中央部に可動域の大きい繰り出し機構が搭載されるので、やや剛性感に欠ける。そして繰り出されたボールペンの芯が何色なのかは軸上に何も表示がないので、リフィル側の表示に依存される。最近の4Cリフィルは先端に色のラインがプリントされていたりするが、視認性には欠けると言わざるを得ない。

 

 

…とまあ、挙げてみるとどんな方式にも一長一短はあるもの。じゃあ使いやすいのは、というとこれは圧倒的にノック式のものだと思う。見た目とかペンケースへの収まりとかを気にするなら振り子ノック式やロータリー式の高級軸となるかな。

選ぶときのポイントは、もちろん必要とする機能の組み合わせが第一ではあるが、ノック式の場合はまずリフィルの書き味が好みかどうか。これは先ほど述べたとおりリフィルが独自規格となるため、長く付き合えるかどうかは書き味が重要になってくる。次に素材や手にした時の馴染み具合かな。一方で振り子ノック式やロータリー式は、リフィルの互換性、すなわち4C芯であることが必須(シャーボXもリフィルのラインナップは豊富なのであまり心配はなし)。その上で手に馴染むかを一番にしたほうがいい。次に重要なのが芯を繰り出したときのカタつき。これは舶来ものだと結構精度の甘さが目立ち、書き心地に影響を及ぼすので試し書きして許容範囲内かはちゃんと確認したほうがいいよ。

 

とまあ、ここまでつらつらと書き連ねてみたけれど、便利だけどなかなかしっくりくるものに出会えないのが多機能ペンの世界だと思う。そんな中で僕が1本お勧めを挙げるとしたら、やっぱりこれかな。

三菱鉛筆 多機能ペン ジェットストリーム 4&1 0.5 ブラック MSXE510005.24
 

 ベタでごめんなさい、職場やクラスで必ず誰かが1本は持ってるやつですな。

でも、価格と機能、完成度の高さでこれを超えるものには出会えない。それくらい素晴らしいんだよな。