紙の上にぐるぐると。

文房具なんかを中心に、興味のあることをつらつらと。

パイロット デラックス漆 キングオブ地味な実力者

パイロット万年筆のラインナップを見ていると、ひときわ異彩を放つ存在がある。デラックス漆。細身のボディーに無地漆塗り、14金の小型ペン先の万年筆。デラックス、というシリーズが昔あったのかな? それの豪華バージョンがそれだけラインナップに残ったといったところだろう。なんだか昭和の残滓みたいな存在だなーと、少なくとも所有欲をそそられるようなことはなかった。

 
それがあるとき新同品が格安でオークションに出ていて、何の気なしに入札してみたら落札しちゃったんだ。かくしてデラックス漆、僕の手元に来る。

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そして手にしてみて、インクを入れてみて。僕はペンに向かって頭を下げて、ごめんなさいと言っていた。なんじゃこれ素晴らしいぞ。
 
まずボディは真鍮に漆塗りで大きさのわりに重さがしっかりある。そして漆の手触り、これは触ってみてもらわないと実感できない。しっとりした感覚が心地いいんだ。
 
嵌合部分も実に良くできていて、パチンと気持ちよくキャップがはまる。わりと気密性もいいみたいで、一週間くらい放置してても書き出しから普通に書ける。いい。
 
ペン先は14金の小型のもの。セレモとかとは違うように思うのだけど、どうだろう? このペン先がやや硬めで、僕のは細字だけど実に素直に優しげな文字が書ける。字が上手くなった気がするんだ。
 
これに極黒を入れるとあらゆるシーンでの実用最強の万年筆が出来上がる。
 
じゃあ欠点はないのかというと、それはある。まず漆だからどうしても塗装面の剥げは気をつけなければならないだろう。あと、首軸先端の金属が、これにひだがあるおかげでインクを吸入したときにどうしても汚れやすい、極黒だとそれがなおさらでね。邪道だとは思うけど、コンバーターに直接インク吸わせてから首軸にはめて使うようにしてる。
 
 
もうね、これでちょっといい便箋に手紙とか書いてる姿とか想像してみ? 老若男女誰が使っていても様になるし、数段品良く見えること請け合い。実際これほどまでにTPOを選ばずそつなく上品にこなせるペンは思いつかないよ。
 
これ、僕みたいなおっさんじゃなく、女性にお勧めしたいんだよな。それなりのご年齢の方なら言うに及ばずだけど、若い人が使ってたらもうなんというか、惚れちゃうね。だってこれ選ぶとか親からとか誰かから頂いたのを大事に使ってるとか、プラス材料しかないでしょ。
 
というわけであらゆる意味で損しないペンなので、ちょっといい、長く使える万年筆を探している人はぜひ試してみてほしいのがこのデラックス漆なのであります。
 
 
でも、やっぱり地味すぎるなー、と思うなら定価で3,000円高いけど、これの派生バージョンのレディホワイトがとにかく素敵。落ち着いた華やかさで、万能さは影をひそめるし、さすがに男性は使いづらいけどね。いつか奥さんに贈りたいんだよな。