紙の上にぐるぐると。

文房具なんかを中心に、興味のあることをつらつらと。

エレガントな機能美あふれる異端児 ウォーターマン カレン

カレンはずっと欲しいというか試してみたい万年筆の一本だった。とはいえ新品となると購入をためらう価格でもあるので、中古で出物があればという気持ちでのんびりと探していた。

それが先日、オークションを覗いているとあまり説明のないカレンっぽいペンが。写真も不足していてペン先の画像もない。なので当然入札も少ない。カレンの相場からしたら半額程度とはいえ半ば金をドブに捨てるつもりで落札してみたところ、届いたそれは良品クラスのカレン ブラックシーだった。ラッキー!

 

f:id:tome_zoh:20170727092029j:image

というわけで僕の手元に来たカレン。真鍮製ボディに嵌合式のキャップ、そしてなにより特徴的な三日月型をした象嵌式の18kペン先という基本構成。なだらかな曲線を組み合わせたようなこのデザインのまとまり具合は素晴らしく、実にエレガントな佇まい。

 

実際に使ってみて驚いたのは、とても扱いやすいペンだということ。嵌合式のキャップは小気味よい音をたてて嵌るし、重量バランスはキャップを後ろに挿しても挿さなくても極端に振れない。フロントヘビーだと思っていたけどそうでもなく、コントロールしやすい。クリップも先端が反った形状なので、すっと胸ポケットに収まる。

 

そしてこの硬いことで有名なペン先。そりゃ象嵌式でサイドをガチッとホールドさせた上にさほど穂先が長いわけでもないのだから、見るからに硬いさ。 

でも、硬いといってもスチールの硬さとは全く質が異なる硬さなので、紙への当たりは柔らかく、どっしりとした筆記感。インクフローがいい個体ならペン全体の重さを活かして、非常に安定感のある書き味を発揮してくれる。

f:id:tome_zoh:20170727092232j:image

 デザイン優先で使いづらいんだろうとタカをくくっていたのだが、さすがウォーターマンの中核ラインだね、異端の極みみたいなフォルムをしておいてそれでいて極めて実用的なペンだ。デザインが一切筆記の邪魔にならない、機能美の極致だと思う。

 

難点もいくつか。ペン先の形状が形状なので、細字には向かないかな。手帳へのメモ書きなんかだと、ちょっとストレス溜まりそう。このペンはその名前とフォルムのイメージどおり、太字をゆったり書くのがいい。

それと、全体の工作精度はやっぱり甘い。特に胴軸の精度。尻軸の飾り? とペン先はピタッと合って欲しいのだけど、インク交換するとなかなか上手くいかない。あと、僕は未確認だけどコンバーターを使ってペン先からインクを吸入すると漏れるという話も聞く。

パーカーソネットにも言えることなのだが、こういう甘さみたいなのが、僕にはなんとなく割高感に感じられるのだろうなあ。国産三万円クラスで当たり前にクリアしている精度をフランス製に求めるにはもう少し上のラインを選択する必要がある、ということなのだろう。

 

でも、そういうところはあっても、この佇まいの魅力的なことといったら。見てよキャップを後ろに挿したこのバランス、実に美しい。

f:id:tome_zoh:20170727191921j:image

18kペン先の滑らかな書き味をゆったりどっしりと味わうなら、国産にはないタイプのたまらない一本だと思うよ。ソネット同様初心者には勧められないけど、一度触れて損はないペンだと思う。

 

これ、ボールペンも当然ながら素晴らしいデザインなのだけど、リフィルがなあ…。